我が国の高等教育においては、「教育の質保証」を中心的な課題として、大学教育改革の取り組みが進められています。その一環として、獣医学教育の質保証をテーマとして、文部科学省内に「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」(以下、「協力者会議」)が2008年12月に設置され、獣医学教育における学部教育の改善・充実に向けた検討が進められ、2011年3月、報告書がとりまとめられました。報告書では「現場の最前線で活躍できる高度な実践力を有する獣医師の養成」および「国際水準の獣医学教育の実現」を目的に掲げ、その達成に向けて、今後の改革の具体的事項および工程表が示されました。
全国大学獣医学関係代表者協議会(全国協議会)は、我が国の国公私立全ての獣医系大学で構成されておりますが、本協議会では2009年に獣医学共用試験調査委員会、2010-11年に獣医学共用試験準備委員会を組織し、協力者会議の報告書が示した「国際水準の獣医学教育の実施に向けた改革工程」に沿ったスタートが出来るよう準備を進めて来ました。
獣医学共用試験委員会は、参加型臨床実習開始前の学生の能力を全国的に同一基準で評価するために、大学間で共通の評価試験を実施することを目的として2012年4月に創設され、試験問題の作成、出題・採点システム並びに評価システムの準備を進めました。その結果、2014年からトライアルを実施し、2017年(2016年度共用試験)から本格実施に移行しました。その間、2015年7月には、共用試験を実施する母体として「特定非営利活動法人獣医系大学間獣医学教育支援機構(NPO法人獣医学教育支援機構)」が設置されました。
国際水準の獣医学教育の実施には、「教育研究体制の整備」、「モデル・コア・カリキュラムの策定」、「分野別第三者評価」、「附属動物病院の整備」および「共用試験」の5本柱が相互補完的に整備されることが大前提です。NPO法人獣医学教育支援機構は、我が国における良質な獣医師の育成を図るため、獣医系大学の教育における学生の学習到達度を判定するための「獣医学共用試験」に関する事業を行うとともに、獣医系大学における教育の充実とその評価に関する事業・啓発・普及活動を行い、もって我が国獣医療の向上と福祉の増進に寄与することを目的としています。