獣医学教育の改善を目指して、2008年11月に文部科学省内に「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」が設置されました。この議論の中では、我が国における理想的な獣医学教育像を描くために、学生の具体的な到達目標を明示した詳細なカリキュラムの内容と教育手法を明示することが不可欠である、との指摘がなされました。これを受け、2011年3月に獣医学教育モデル・コア・カリキュラムを完成させ、2012年3月には改訂第2版を出版しました。
時を同じくして、2009年に獣医学共用試験調査委員会が発足しました。2006年から開始された医学共用試験、2009年からの薬学共用試験を先行例として調査検討し、全国の獣医系16大学すべての教職員、学生のご協力のもとvetCBTとvetOSCEトライアルを実施し、2017年から本格実施に移行しました。
獣医学臨床実習をこれまでの見学型から参加型へと転換するためには、獣医師法第17条(飼育動物診療業務の制限)の違法性の阻却要件である「社会に対する獣医学教育の質の保証」が不可避となります。質の高い獣医学士を輩出し、より実践的で質の高い獣医療を提供するための獣医学教育の改革は、社会の要請です。すなわち、モデル・コア・カリキュラムと参加型臨床実習はその獣医学教育改革の基盤であり、このたび実施される獣医学共用試験は参加型臨床実習に臨む学生に対する事前評価なのです。
試験の公平性と透明性を確保し、社会的信頼性が獲得できるような学生の質を評価・保証するシステムを構築することは、獣医系大学の教員全ての使命であると考えております。
獣医学の学生や教職員のみならず、獣医学・獣医療関係者、そして社会一般および国民の皆様におかれましても「獣医学共用試験」の意義をご理解いただき、共用試験の円滑な運用へのご協力と改善へのご指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2018年10月1日
特定非営利活動法人獣医系大学間獣医学教育支援機構
理事長 髙井 伸二